カシワ バ アジサイ
 二人が事務所に飛び込んできたのは雨の降る午後でした。若い二人は傘もささずに入ってきました。少しおびえたようでした。私は未成年の駆け落ちと直感しました。不動産業者にとってお客でもなんでもなく厄介な存在です。男の子「あっあの・・アパート・・安いアパート・・お願いします」 私「すみません未成年者とは民法の規定で契約できません」 男の子「二人とも成人してます ぎりぎりです」 私「すみません仕事してないと無理ですよ」 男の子「してます最近ですけど」 私「いまどこにお住まいですか」 男の子「知り合いのマンションでお世話になります もう限界です」 
 あ~最悪 この二人帰ったら塩だ!ハッキリいって私はいそがしい私は暇ではない私は消化しなくてはいけない仕事が机とテーブルと本棚から崩れるほどかかえている。あなたたち二人の相手はしたくないこれ以上疲れることはごめんだ。この二人駅前の交番に行った方いい。男の子「やっぱり保証人2名以上いりますか。保証会社と契約しないといけませんか。両親の同意書いりますか。所得証明書必要ですか。」 私はそんなこと何もいってない、この二人いろんな所でずいぶん痛めつけられている。 男の子「赤ちゃんいるんですけどダメですか。」 二人じゃなくて三人なの これは市役所の福祉課の仕事だ私の仕事じゃない。男の子「仕事がんばって がんばってやっていきたいんです。おねがいです。申し込みだけでもさせてください。」 あ~なんか巻き込まれそう・・ 私「じゃ申し込みだけね これ書いてみる」

アジサイと二人わッ すごくきたない字、書き順めちゃくちゃ、行間もスペースもあったもんじゃない、それに彼女の名前そんな漢字はないよ彼女の名前間違えるなよ 男の子「子どもの名前もかきますか。」 私「ええどうぞ」  すごい!全22画 すらすらと書いた これは難しい読み方 この男の子正真正銘の父親なんだ。きっと赤ちゃんがお腹にいる時から名前を考えていたんだ。父親として自分ができる精一杯のこと真剣に考えて悩んで産まれてくるわが子に誰にも負けない立派な名前いをつけたんだ。 キララネームと思っていた自分が恥ずかしくなった。男の子「給料日が10日先です。その日にお金いれてその日に契約してその日に引っ越ししてその日に・・・」  業者泣かせの案件だ・・・三人を受け入れてくれる環境そして守ってくれる理解ある大家さん・・・
 資本金数億円の会社の創業者でもあり会長、ビル・マンション・貸家・アパートなど不動産のオーナー、そして創業家の当主でもある大奥様にお願いするしかない。会社で可愛いくて大切にしている女性社員を奥手の私と見合いをさせたほどの世話好きの大奥様だ。大奥様の豪邸に連絡、面会の了解をいただいて二人をクルマにのせて雨の中・・・

日本名:柏(カシワ)葉(バ)紫陽花アジサイ 一般にアジサイは土が酸性の場合青く、アルカリ性の場合赤くなる 花言葉は移り気 浮気 結婚式では禁忌される。しかし、カシワバアジサイは土に左右されることなく白の花をつらぬく、花言葉は「汚れなき心・清楚な美しさ」 二人が・・ 三人がいつまでも・・・・